LANケーブルを買うとき、
「1mより10mの方が遅くなる?」
「20mも引き回したら速度が落ちる?」
と気になることがあります。
先に結論です。
一般的な家庭やオフィスで使う数m〜数十m程度のLANケーブルなら、規格に合った正常なケーブルを使っている限り、長いからといって通信速度が距離に比例して少しずつ落ちていくわけではありません。
たとえば1Gbpsでリンクできる構成なら、1mのケーブルだから1Gbps、20mだから800Mbpsになる、という考え方ではありません。
ただし、Ethernetには規格ごとに想定されている距離があります。
その距離を超えたり、途中のコネクタやケーブル品質に問題があったりすると、
- 1Gbpsでリンクしない
- 100Mbpsでしか接続できない
- 通信エラーが増える
- 接続が不安定になる
といった症状が出る可能性があります。
この記事では、「LANケーブルは長いと遅くなるのか」を、家庭や仕事場で使う距離感に合わせて整理します。
先に結論:規格内なら「長いほど遅い」とは考えなくていい
まず、普段使いなら次の感覚で大丈夫です。
| ケーブルの長さ | 考え方 |
|---|---|
| 1〜5m | 長さによる速度低下を気にする必要はほぼない |
| 10〜20m | 1Gbpsなら通常は問題なし。必要な長さを選んでよい |
| 30〜90m | 1Gbpsでは100m以内が大きな目安。壁内配線や短い接続ケーブルも含めて区間全体で考える |
| 100m前後 | PC〜スイッチ / ルーターなど、1つのEthernet区間全体の上限を意識する |
| 100m超 | 途中にスイッチを入れる、光へ変えるなど構成を見直す |
Ciscoは1000BASE-Tについて、Cat5以上のツイストペアケーブルで最大100mをサポートすると案内しています。
ここでいう100mは、LANケーブル1本ごとに100m使える、という意味ではありません。
PCとスイッチ / ルーターなど、通信する機器どうしを結ぶ1つのEthernet区間全体で考えます。
たとえば家庭で、
PC
→ 10mのLANケーブル
→ ルーター
なら、その区間は合計10mです。
壁内配線があるオフィスで、
PC
→ 3mのLANケーブル
→ 壁のLANコンセント
→ 80mの壁内配線
→ 5mのLANケーブル
→ スイッチ
という構成なら、合計は約88mとして考えます。
配線規格では、こうした機器間の配線全体を「チャネル」と呼び、一般的には固定配線90m+両端のパッチケーブル等を合わせて100m以内が目安です。
途中にスイッチを入れる場合は、そのスイッチが通信を受け直すため、スイッチの前後は別のEthernet区間として考えます。
つまり、
PC
→ 80m
→ スイッチ
→ 80m
→ 別の機器
のような構成は、「160mのLANケーブル1区間」ではありません。80mの区間が2つあるイメージです。
そして1Gbpsの有線LANでは、100mという距離は「1mより100mの方が100分の1の速度になる」という意味でもありません。
規格として、その距離まで1Gbps通信を成立させることを想定している、という意味です。
1Gbpsなら、一般的なLANケーブルの目安は100m
1000BASE-T、つまり一般的な1Gbps Ethernetでは、最大100mがよく使われる距離の目安です。
Ciscoの現行ハードウェアガイドでも、1000BASE-Tは最大328フィート、約100mまでとされています。
この100mは、家庭でPCとルーターをつなぐ5mや10mのLANケーブルと比べるとかなり長い距離です。
そのため、
- ルーターが別の部屋にある
- 机まで10mほど引きたい
- 壁沿いに20m近く配線したい
といった程度なら、まず「長いから速度が出ない」と考える必要はありません。
長さより先に、
- ケーブルのカテゴリ
- ケーブルの損傷
- コネクタの接触
- ルーターやスイッチの対応速度
- PC側LANポートの対応速度
を確認する方が重要です。
なぜ長くても速度が少しずつ落ちるわけではない?
LANケーブルの中を流れる信号は、距離が長くなるほど減衰やノイズの影響を受けやすくなります。
だから距離が無関係というわけではありません。
ただしEthernetは、
「1mなら速い、50mなら半分の速度」
というように、距離に応じて通信速度を連続的に下げる仕組みではありません。
1Gbpsで正常にリンクしているなら、そのリンク自体は1Gbpsです。
問題になるのは、距離・ケーブル品質・ノイズ・施工状態などの影響で、その通信条件を満たせなくなったときです。
そうなると、
- リンクが成立しない
- 別の低いリンク速度で接続される
- パケットエラーや再送が増える
- 接続が切れやすくなる
といった形で現れることがあります。
「長いから少し遅い」というより、「長すぎたり状態が悪かったりすると、規格どおりの通信を維持できなくなる」と考えた方が近いです。
10m・20mなら気にしなくていい?
1Gbps用途で、仕様の分かる正常なCat5e・Cat6・Cat6Aを使っているなら、10mや20mという長さだけを理由に避ける必要はありません。
たとえば、1mのケーブルを無理に使ってルーターを変な場所へ置くより、必要な長さのLANケーブルを使ってきれいに配線した方が実用的です。
ただし、長いケーブルほど、
- 家具に挟まれる
- 強く折れ曲がる
- ドアに踏まれる
- コネクタが抜けかける
- 電源ケーブルなどと長く並走する
といった配線上の問題に触れる機会は増えます。
「20mだから遅い」ではなく、「20m引き回した結果、配線状態が悪くなっていないか」を見る方が重要です。
Cat5e・Cat6・Cat6Aで距離は変わる?
1Gbpsで使う場合、Cat5e・Cat6・Cat6Aはいずれも100mまでの利用を考えられます。
ただし10Gbpsでは話が変わります。
Cat6Aは10GBASE-Tを100mまでサポートするために設計されています。
一方、Cat6で10GBASE-Tを使う場合は、周囲の配線から受けるクロストークなどの条件によって距離が制限されます。
Fluke Networksは既存Cat6配線での10GBASE-Tについて、37mまでは動作が期待され、37〜55mは周囲のクロストーク環境によって左右され、55mを超えると追加対策が必要になる場合があると説明しています。
そのため、
- 1Gbps → Cat5e以上なら100mを基準に考えやすい
- 10Gbps → Cat6では距離条件に注意
- 10Gbpsを100mまで使いたい → Cat6Aを基準にする
と整理すると分かりやすいです。
Cat5e・Cat6・Cat6Aの違いそのものは、LANケーブルのCat5e・Cat6・Cat6Aは何が違う?で詳しく整理しています。
長いLANケーブルに交換したら100Mbpsになった場合
たとえば、
「短いケーブルでは1Gbpsだったのに、長いケーブルへ替えたら100Mbpsになった」
という場合。
このときも、まず「長いから100Mbpsになった」と決めつけない方がいいです。
確認したいのは、
- 新しいケーブルがCat5e以上か
- 8本の配線がすべて正常か
- コネクタに傷みがないか
- 壁内配線や中継コネクタを増やしていないか
- 途中に100Mbpsまでのスイッチやアダプターが入っていないか
です。
1000BASE-Tでは4対すべての配線を使います。
そのため、一部の芯線や接点に問題があると、1Gbpsでリンクできず100Mbpsになることがあります。
有線LANが90〜100Mbps前後で頭打ちになる場合は、有線LANが100Mbpsしか出ない原因と確認ポイントで順番に切り分けてください。
長いLANケーブルを途中でつなぎ足しても大丈夫?
LANケーブルを延長コネクタでつないだり、壁の情報コンセントを経由したりする構成自体は珍しくありません。
ただし、接続点が増えるほど確認する場所も増えます。
たとえば、
PC → LANケーブル → 延長コネクタ → LANケーブル → 壁ジャック → 壁内配線 → スイッチ
という構成なら、どこか1か所の接触や配線品質が悪いだけでも通信へ影響します。
必要な距離が最初から分かっているなら、家庭での簡単な配線では、無理に短いケーブルを何本もつなぐより、適切な長さの1本を使う方がトラブル箇所を減らせます。
ただし、建物内の構内配線はパッチパネルや壁ジャックを含めて設計するため、単純に「1本が正義」という話ではありません。
家庭や小規模なデスク配線なら、不要な中継を増やさない程度に考えておけば十分です。
100mを超えて配線したい場合は?
100mを超える距離へ有線LANを伸ばしたい場合は、長いLANケーブル1本で無理に延ばすより、ネットワーク構成を見直します。
候補は、
- 途中にスイッチを入れてEthernet区間を分ける
- 光ファイバーを使う
- 建物間なら専用のネットワーク設計を行う
などです。
特に別棟・倉庫・工場・広いオフィスなどへ配線する場合は、距離だけでなく雷・接地・ノイズ・施工方法も関係します。
一般家庭の「2階までLANケーブルを引きたい」という話と、建物間を100m以上つなぐ話は分けて考えた方が安全です。
PoEでは「通信できる距離」と「給電条件」は分けて見る
LANケーブルでアクセスポイントやIPカメラへ電力も送るPoEを使っている場合は、通信だけでなく電力供給の条件もあります。
ケーブルが長くなるほど電気抵抗による損失も増えるため、PoE機器では対応規格・消費電力・ケーブル品質も確認が必要です。
「通信が1Gbpsでつながっているから、給電も何でも問題ない」とは限りません。
PoE機器を長距離で使う場合は、スイッチ・給電機器・受電機器・ケーブルの仕様を合わせて確認してください。
長いケーブルを買うときは「ぴったり」より少し余裕を持つ
必要距離が8mなら、8mぴったりを無理に張るより、10mなど少し余裕を持たせる方が配線しやすいことがあります。
ただし余りすぎたケーブルを狭い場所へ強く巻いたり、家具の下へ押し込んだりするのも避けたいところです。
選ぶときは、
- 実際の配線経路を測る
- 壁沿いや机の上下を含めて少し余裕を足す
- 余った部分を無理なくまとめられる長さを選ぶ
くらいで十分です。
「短いほど速いから最短を選ぶ」という必要はありません。
まとめ:数m〜数十mなら、長さより規格と状態を見る
LANケーブルは、長いほど通信速度が比例して落ちるわけではありません。
1Gbps Ethernetでは100mが代表的な距離の目安で、家庭や仕事場で使う5m・10m・20m程度なら、正常なCat5e以上のケーブルであれば長さだけを心配する必要はほぼありません。
覚えておきたいのは、
- 1Gbpsでは100mが大きな目安
- 10m・20mだから遅くなるわけではない
- 問題があるときは長さよりケーブル品質・コネクタ・途中機器も見る
- 10GbpsではCat6の距離条件が厳しくなる
- 10Gbpsを100mまで使うならCat6Aが分かりやすい
- 100mを超えるならネットワーク構成自体を見直す
ということです。
長いLANケーブルが必要なら、無理に短くするより、必要な長さを正しく測って規格に合うケーブルを選んでください。









